ARTBOX大賞展
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第19回ARTBOX大賞展 講評


岡村桂三郎(画家・多摩美大教授)

 僕が審査に加わったのは、最終審査でした。15名に絞り込まれた後だったの で、それ以外の作品のことは分からないのですが、最終審査に残った作品ばかり が並んだ景色は、なかなか、それなりに迫力のあるものでした。

 これから受賞作品について、講評してゆきたいと思いますが、その前に一言。

 審査していて、受賞できなかった作品の中にも、正直、あれも入れたかった、 これも入れたかったと思うものがありました。特に、作品の応募規定などのこと もあって、他の規定であれば、別の結果が生まれていたかも知れません。それで も、これはこれ。今回は、この結果でした。次に期待してます。

 審査会場に入ってすぐに、「これだな。」と直感的に感じた作品が、たかはし だいさんの作品でした。

 描く対象が、絞り込まれていて、その分、作品の主張が強く打ち出されている と思います。シンプルな画面が、他の作品の群れから、一つ飛び抜けて、存在を 主張していました。全体に楽に画面が構成されていて、描きっぷりが軽妙なとこ ろも、魅力なのだと思います。

 ただ、たらし込みのような表現は良いのだけれど、ちょっとペチャペチャし過 ぎたかな?どこか曖昧なところを感じます。エッジの部分が、大切なのです。

 何か確信を持って、「コレだっ!」という自分への信頼を持っても良いかも知 れません。自分を信じて、もっとやっちゃって良いのだと思います。そこが、始 まりなのですから。

 今本千秋さんの作品は、最初のうち、その面白さに気が付かなかったのです が、観ているうちに、徐々に、その作品の独特な感性に捕われて、逃れることが できなくなっていってしまいました。何処から来るのか分かりませんが、不思議 な魅力が有ると思います。きっと自分に正直に絵を描いている人なのでしょう。

 絵画としては、未完成でバランスを欠いている所も有ると思いますが、そこの 所が逆に無垢な感じがして、独特な感性をあらわに見せている所なのかも知れま せん。このまま、素直に成長していって欲しいなと思います。

 下の方に、青い色面が入っている作品。少し、バランスが取れ過ぎていて、作 品の本来の魅力を、損なってしまっている可能性がありますよ。

 近内美和子さんの作品は、いわゆる日本画的な表現でありながら、ちょっとズ レているところが良かったのだと思います。

 また、どの作品もそれぞれに、明らかに狙っているところが有り、そこがこの 人の特徴であり、強みであるのだと思います。ですから、ぜひ、そこの所は、 キープし続けていって欲しい所ですね。

 ただ、気を付けないといけないのは、狙い過ぎて、本人の、個人の感性が、な いがしろにされてしまっているきらいが有るような気がします。個人の感覚を、 常に磨いていくことが、通俗に陥らないための、唯一の方法なのだと思います。 そのつもりで、写生を続けていって下さいね。何かに感動すること。

 清水総二さんの作品は、やはり顔の表情が面白いのと、何かを、一生懸命描こ うとする姿勢に好感が持てるのだと思います。だから、今後もそこのところは大 事にしていってもらいたいですね。

 特に静物の作品の方で明白なことなのですが、モチーフの回りの空間のとり方 にもっと神経を入れたら良いと思います。もちろん、顔の作品でも、同じことが 言えると思います。

 まあ、顔の方は、そういったのでは無く、別の方向性も有りですけど。それに しても、顔の入れ方や、切れ方。回りのものとの、関係にも気を使った方が良い かも知れないですね。そういったところができてくれば、ググッと良くなると思 いますよ。

 乃青ミルカさんの作品は、作品の主題になっている物語の面白さと、描かれた 画面から、そこはかとなく漂ってくるノスタルジックな香りが、何とも言い難 い、とても好ましいものと感じています。おそらく、「この人は、こういう人な のであろう。」と、強く納得させられるものを感じます。楽しみながら、どんど ん制作していって欲しいですね。

 僕は、石版という技法が、どのようなものなのか詳しく知らないので、強く言 い切れないのですが、白と黒のバランスを、もうちょっとなんとかしたら、見え 方が随分違ってくると思うのですが、どうでしょうか?また、それは構図の問題 でもありますね。

 グランプリ、準グランプリを受賞された方々、おめでとうございます。これか らも、よい作品を見せて下さい。個展、期待してますよ。