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ART BOX IN JAPAN シリーズ最新刊「現代日本の彫刻」刊行を記念して、現在多数のモニュメントを手掛ける他、積極的に個展活動をされている、彫刻家:小堤良一さんをお迎えしてお話をうかがいました。詩情を謳うような優美で気品あふれる具象彫刻において評価が高い、小堤さんご自身の体験や作品に対する想いなどをお届けいたします。

プロフィール
東京藝術大学美術学部彫刻科卒業。同大学院修了。舟越保武氏に師事。個展多数。主な作品:赤坂DSビル「梟」/(株)東京堂ふくろう店「知の森」/(株)東京堂千代田ビル「ふくろう家族」/墨田区「ダンス・ダンス」他多数。
2005.5/9より現代日本の彫刻出版を記念しART BOX GALLERYにて個展

美術の中でも、とりわけ肉体を使った彫刻に魅力を感じた
絵が好きだった私は、高校時代は普通科に通う生徒でした。在学中に学園紛争が起こったことで、おのずと社会の歯車になりたくないなぁ、という意識が芽生え、美術方面に進むことを考えていました。そんなこともあって、デッサンを習いにお茶の水美術学院に通い始めたのです。でも進学の際、専門分野を決めるにあたり、細やかな神経を使う絵画よりも、肉体を使って創造するという何か男っぽい感じの彫刻に惹かれました。 躍動感あふれるイタリア彫刻が新鮮に映った
当時、専門を彫刻と決めたものの、私自身はそれほど彫刻家や作品を知りませんでした。なにしろ彫刻作品をまとめた書籍も少なかったですしね。ところが私が大学に入学した頃は、ちょうどヨーロッパから彫刻が集中して日本に紹介されはじめた時期だったのです。特にマンズーやグレコなどのイタリア彫刻が日本で見られる機会が多くありました。イタリア彫刻の特徴は動きが重視された躍動的なもので、今までにない新鮮な表現として映りました。それまでの構成がしっかりしていて存在感のある重い彫刻とは違う、軽やかな感覚がありましたね。その頃の銀座でも現代彫刻センターなど彫刻専門の画廊がまだ幾つかあって、実際に作品を観る機会に恵まれていたことで学ぶことができました。人格者だった舟越保武先生
予備校時代の先生の影響もあって、大学時代の始めはイタリア彫刻風の作品を作っていました。でも自分の好きなものばかりをやっていても前進がないだろうと感じて、自分とは違うスタイルの先生につきたいと思いました。それが舟越保武先生です。物静かな先生は技術などを押しつけない、対等な立場で意見を言う方で尊敬していました。そして人間のスケールが大きいというか、人格者でした。先生の作品は、ただ立っているだけで美しい、そんな静謐(せいひつ)な美を感じます。最近また、先生の作品が好きになりましたよ。自らの体を使って作り続けることで出てくるアイデア
若い頃は特に発想だけはものすごく出てくるわけですよ。技術や実力などが足りなくて、それらを形にしたり実現できないことは多々あるのですがね。でも年をとってくると逆に発想だけが沸き出てくるというようにはいきません。新しい発想は体を使って作り続けているうちに出てくるのです。今こうだけど、次はこうくる、などと現在の延長上に作品のアイデアが生まれきます。6年くらい前からブロンズだけでなくテラコッタで作品を作るようになりました。自由度が高く複雑な形ができるテラコッタの素材では、デッサンせずにいきなり作っていきます。作りながら考える、というスタイルです。人体を使って「美」を表現する
私の作品には特定のモデルはいません。たまたまの結果として「優美な女性像」(と言われる)が生まれるのです。美しいフォルムを女性という素材を借りて作っていると言ってもよいでしょう。全体の動きの美しさや各部分の立体的美しさなど、人体を使ってそういうものを表現しています。全て造形的な構成のから考えます。そして制作に取り掛かるときは、自分の感覚を信じて正直に作っていきます。動物は新しいモチーフ
ずっと人体を中心に彫刻制作をしてきたのですが、建築家との仕事で建物にフクロウの彫刻を置きたいという依頼がきっかけで、初めて動物の彫刻を作りました。作ってみて分かったのですが、フクロウや動物は自分の培ってきた美的感覚を裏切るようなかたちをしたモチーフだったのです。人体の均衡美が体に染み込んでいるからなのか、初めは全体からするとバランスの悪い鳥の大きな足やくちばしに違和感を覚えました。それが動物をモチーフに制作したときの驚きと発見でした。見る人にとってその場の空間が広がる彫刻
学生時代に美術館で中原悌二郎の「若きカフカス人」の頭像作品を見たとき、とてもいいなあと感動した覚えがあります。今振り返って考えると、その彫刻の良さは見たときにその場の空間がふわっと広がるような感覚に包まれたからだったと思います。ですから、自分の作品もある場所に置かれたときに、見る人にとって空間が広がるような感覚や気持ちが豊かになってもらえたら嬉しいですね。新しいモチーフに取り組み、自分のフォルムを追求
長い間作ってきた人体も、まだ自分のフォルムにして消化しきれない感じもありますが、今後動物という新しいモチーフにおいても挑戦していきたいと考えています。フクロウシリーズの鳥類を発展させたり、トカゲやヘビなどの爬虫類を作ることでも自分のフォルムを追求していきたいですね。そしてどんなモチーフであっても、見る人が豊かな心持ちになれるような作品にしたいというのは変わりありません。

現代的な美意識が具現化された小堤良一の作品は、凛とした気品に満ちあふれています。今回はレリーフ、テラコッタ、ブロンズを数点ずつ出品。その中から3点、エピソードをを交えてご紹介致します。作品一覧
遠い波頭 \1,050,000/ブロンズ
この作品には、表面の仕上げにイタリア彫刻の特徴が活かされいます。吹きっぱなしといってブロンズを型から取り外した後、あえて磨かず、色も付けずにバリやかすを残してわざと粗野な味を出しています。

夏の朝 \367,500/テラコッタ
ブロンズ以外に使い始めたテラコッタ素材での作品。型をとらないで一点物を作っています。流れるような細かい髪の毛や巻き付いた布など、より複雑な表現が可能です。

なごみの森 \126,000/ブロンズ
フクロウをモチーフにした作品は最近のものです。これから鳥類も幅広く研究して魅力的な作品を作っていきたいと思います。

現代日本の彫刻/年鑑
日本を代表する彫刻家109名の作品とプロフィール・コメントを紹介した「現代日本の彫刻」。多様な立体芸術を一望できる本書からも、小堤さんの作品をご覧頂けます

親しみやすく、ユーモアあふれる語り口調の小堤良一さん。個展のオープニングの際には、趣味で20年以上続けているフルートの演奏をご披露いただきました。実際、彫刻を制作する前には、バッハの「ソナタ」、そして作品完成後にはモーツアルトの「フルート協奏曲」を演奏することもあるそうです。バッハの曲は気分が落ち着くので制作体勢に入る前にはちょうどよく、周りの空間が広がるような感じのするモーツアルトで制作の最後を締めくくるのが理想とか。そんな繊細な感受性の持ち主の小堤さんが作る彫刻作品の今後がますます期待されます。

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